本日のカデンツァ

aurorapia.exblog.jp ブログトップ

第1回 上岡敏之&ヴッパータールシンフォニーコンサート

2009年9月21日、20時より、ドイツ・ヴッパータール、シュタットハレでWuppertal交響楽団の第1回シンフォニーコンサートが行われた。ドイツもこのところずいぶん日が短くなり20時にはすっかり日も暮れている。
開演の30分も前からホワイエはいつもながら多くの人でにぎわっている。いつも思うのだがここはひとつの社交の場。そしてあまり広くないので知っている顔にかならず出会うのだろう。
このシュタットハレの大ホール(Grosser Saal)は素晴らしいホールである。舞台は少し高めであまり広くはないのでピアノコンチェルトのときなどは舞台がいっぱいいっぱいになる。
e0195884_181436.jpg

“Freiheit(自由)“がテーマの今日の演奏会はオールベートーベンプログラム。
はじめは『エグモント』序曲。エグモントとは実際に実在したオランダの政治家で軍人であった人物で、民衆の自由を守ろうと独立運動を指導したにもかかわらず、とらえられて死刑になってしまう悲劇的英雄。彼をモデルにゲーテが戯曲を書き、その戯曲にベートーベンが付随音楽として作曲した最初の曲がエグモント序曲である。
拍手が鳴り止むやいなや、悲劇を予感させるようなかなり強い始まりだ。テンポはかなり早め。つづくメランコリックなオーボエの旋律で少しテンポを落とす。中間部の弦は強く縦に刻み、木管の呼応する旋律は上からのせるように。木管には自由と平和を与えるように開放感を与え、弦はしっかりそれを支える。
上岡さんの表情にはエグモントの苦悩、それにベートーベン自身の晩年の苦悩が投影されていたが、最後のファンファーレで高らかに勝利を手にした喜びに纏められた。
e0195884_1841135.jpg

つづくピアノ協奏曲5番。ソリストにAbdel Rahman El Bacha(アブデル・ラーマン・エル=バシャ)、何度も来日しているレバノン出身、フランス在住のピアニスト。
決して強靭で勢いのある演奏ではなく、どちらかというと堅実な丁寧な演奏。第1楽章はピアノのカデンツァに配慮したピアノとオーケストラのバランスもよく熱演もあいまってか、1楽章が終わったところで会場から拍手。2楽章の中間部からピアノ主体の開放的な旋律は本当に美しく、特にピアノが分散和音を受け持ち、木管がメロディーを奏でる部分は感動的であった。
2楽章最後の3楽章のテーマの提示はかなりゆったりと時間をかけて、続く3楽章へ。安定したリズムのライトモチーフと丁寧なスケーリングで、次第に華やかな演奏となっていく。表現は決して大きくはなくむしろこの曲にしては控えめで、音に重量感を感じさせない端正でいて躍動的な演奏だった。
終演後、エル=バシャさんにお話をうかがう機会があったのだが、とても気さくで日本にとても友好的な方だった。好きな作曲家はショパンとベートーベンだという。(11月中旬から日本公演があるそう)

休憩をはさんでベートーベン交響曲7番。アインザッツが素晴らしく美しい。テンポはかなりゆったりめでソステヌートを十分に生かしている。上行の弦も16分音符が8音ずつ正確に刻まれ2拍子を感じることができる。Vivace、8分の6拍子の5小節目、フルートのメロディーからテンポと表現がより色彩豊かに変化する。弦と管、とくに木管のバランスに配慮した曲運びで中間部から少しテンポをあげて、開放感に満ちた演奏であった。それに答えてか、1楽章が終わったところでまた拍手。(しかし、これは2楽章への緊張感を遮断する意味であまりよくなかったように思う。)
緊張感を入れ直して2楽章Allegrettoへ。あまり遅くはない安定したテンポで、強弱のコントラストをつけ、少し重量感を加味した和声学的進行に配慮した演奏だった。時折、上岡さんは右手の指揮棒を左手にもち、右手の細かな動きで指示をいれていた。3楽章は明瞭なスケルツォ。緊張感がほぐれる軽快な演奏だ。ひと呼吸おいて、最終楽章へ。左に右に、上に下に自在にタクトを振り、これほどの情熱がどこからあふれてくるのだろうかといわんばかりの上岡さんに気持ちよいほどオーケストラの音がどこまでもついてくる。コーダのGの音で頂点に登り詰めた緊張感と開放感が同時に溢れ、この作品に似つかわしい情熱的なフィナーレとなった。
e0195884_1852356.jpg

Wuppertal交響楽団との6年目の新しいシーズン。いつもにまして熱いカーテンコール。聴衆も十分、“わが町のオーケストラと上岡さん”を自分たちのものと意識している感が印象的だ。来年10月の東京をはじめ各地で10公演が予定されているという。日本公演も今から楽しみである。

ヴッパータール交響楽団(ドイツ・ヴッパータール Stadthalle)
指揮   上岡敏之
ピアノ  Abdel Rahman El Bacha
(演奏曲目) 
ベートーベン 『エグモント』序曲
ベートーベン ピアノ協奏曲 第5番 Op.73
ベートーベン 交響曲 第7番 Op.92
[PR]
by aurorapiano | 2009-09-26 18:07 | オーケストラ

音楽・四方山話


by aurorapiano
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite