本日のカデンツァ

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ウィーン旅行記

本業の方で学会があり、11月4〜6日までウィーンを訪れた。
残っていたEUレイルパスの使用期限がせまっていたのでドイツから列車でウィーン西駅に入ることにした。余談になるがEUレイルパスというのは日本からの旅行者にとってかなりお得なチケットだと思う。3カ国以上、5日以上と国、日程は自由に選べ、その範囲内であれば1日どこまでも乗り放題。期限は最初の使用日から2ヶ月以内で、ドイツ国内にだけ適応されるジャーマンレイルパスの1ヶ月に比べて長い。しかも26歳以上は必然的に1等席を購入するしくみになっているので快適な列車の旅が楽しめる。私はドイツ、フランス、オーストリアの3カ国、6日というチケット395ユーロのチケットを購入していたので、一日70ユーロ以上の旅で十分元がとれる。

さて、15時半にウィーン西駅に到着したのだが、どんよりした天気のせいもありすでに夕刻の雰囲気。しかも寒い。私はあまりウィーンに歓迎されていないのだろうか。
シュタッツオーパーで“サロメ”をみるか、ムジークフェライン(楽友協会)でウィーン交響楽団を聴くか迷ったが、結局後者を選んだ。
ムジークフェラインのチケットはぎりぎりまでオンラインでの購入が可能である。しかも日本語で。興味本位でオーケストラの舞台上の席を選んだ。こんなことはドイツの劇場のサイトではまずないので、いかに親日的かがよくわかる。さて開演の40分前に楽友協会に着く。予約しておいたチケットをAbendkasseでピックアップして中をじっくり見学すると、親日的と思ったその理由のひとつがみえた。サントリーホールと提携していること、日本企業の経済的寄与が壁に刻印されていた。
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19時半に開演。ファビオ・ルイージ指揮によるウィーン交響楽団のロシアンプログラム。ラフマニノフのピアノ協奏曲2番、ソリストに若くて愛らしいリサ・デ・ラ・サレ、そして後半はチャイコフスキー交響曲5番。
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同じ演目で3日間の初日とあって聴衆はほぼ満員である。サレのピアノは若いながらテクニックだけにとどまらず、ダイナミックさと繊細さをよく表現していた。そして、アンコールにバッハのシチリアーノ(原曲はフルートソナタ2番2楽章)をしっとり聞かせた。
後半のチャイコフスキーは躍動感にあふれ、縦の刻みをはっきりさせた演奏でかつ大胆に時折テンポを動かした完成度の高い演奏だった。

翌朝、まず向かったのがセセッション(ウィーン分離派会館)でクリムトのベートーベンフリースをみる。
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たまねぎのような金色の装飾が印象的なセセッションは地下鉄カールスプラッツ(Karlsplatz)から徒歩3分というところにある。ベートーベンフリースはワーグナーのベートベンの第九の解釈をもとにしたモチーフからグスタフ・クリムトが1902年に描いた壁画である。セセッションの地下にはいるとシンプルな部屋の3面に大きな絵が描かれている。第九が書かれ、初演が1824年なので、このクリムトの作品はそれから80年近くを経て創作されたことになる。絵を見た音楽家がそれを標題として作曲することはこれまでに珍しいことではない。しかし、音楽を解釈して絵画として表現するというのはきわめて珍しい。合唱を歌う女性の姿が描かれているがこれは4楽章を意味するだけでなくシラーの詩に書かれる歓びを直に表現しているようにもとれる。日本ではいったいどれだけの第九が年末に演奏されるのだろうというほど一般的になった経緯の中にはこのような歴史がウィーンでもあったのだ。

そしてシュテファンドームにほど近い場所にあるモーツァルトハウスに向かった。2006年にモーツァルト生誕250年にちなんでリニューアルされたそうだ。
日本語のガイドもあるので問題はないのだが、そのガイドと展示がいまいちかみ合っていないのと、ガイドが長く分かりにくい。少し観光地化しすぎている感が否めないのが少し残念な気もする。

そしてクリムトの黄金の時代の“The Kiss“の本物があるということでヴェルヴェーレ上宮オーストリア絵画館へいった。
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この絵だけはガラス張りのセキュリティーがしっかりかけられ、上からはスポットライトもあたっている。この絵画館の中でも一等特別な存在だ。風景画は明るく美しく、抽象的な人物装飾画よりはむしろ新鮮に思えた。その他にほぼ同時代を生きたシーレ、ココシュカの作品も観ることができる。ここにあるシーレの作品はクリムトとは対照的に暗い絵が多い。そしてこれらの画家たちの名前がでてくると必ず思い出される人物がいる。絶えず流動する芸術の世界に翻弄される芸術家たちの中でその時代を生き抜いた作曲家マーラーの妻のアルマ・マーラーだ。

溢れる芸術の街、ウィーンを次に訪れるときは何をみようか・・・少し後ろ髪をひかれながら空港をあとにした。
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by aurorapiano | 2009-11-25 03:57 | なんでも旅行記

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